■設計ラボ■フルリノベーション
設計デザインの山岸です。
2025年3月末より着工した既存住宅のフルリノベーションが、このたび無事に完成しました。
外構工事まで含めて約7か月に及ぶ長期プロジェクトでしたが、建物全体の性能と居住性を大幅に向上させることができました。
今回は、設計の立場から、この工事のポイントと狙いを少し詳しくご紹介したいと思います。
お住まいは、まだ築27年の木造住宅でした。
構造体に問題がある可能性が低いことは、容易に想像できました。
建替えも検討されていましたが、施主様の「思い出のある家を活かし、子供や孫と暮らしたい」というご意向を尊重し、既存の基礎・土台・柱・梁・屋根を残しながら性能を高める「2世帯フルリノベーション」を計画しました。
既存の構造を生かす場合、最も重要なのは「現況の把握」です。
まず仕上材の撤去をしながら既存建物の調査を実施し、構造体の状態や補強が必要な箇所を正確に調べました。
その結果、構造の一部に不陸・変形が見られたため部分交換を行い、梁や柱には金物補強を追加。
必要に応じて耐力壁の追加を施しました。
これにより、既存構造を活かしながらも、現行基準に近い耐震性能を確保することができました。
リノベーション設計では「壊す前に調べる」「残すなら補う」というプロセスがとても大切です。
次に取り組んだのが、断熱性能の向上です。
既存住宅では、窓や床下、天井からの熱損失が大きく、冬場の寒さや夏場の暑さに悩まされていました。
そこで今回は、最新の断熱性能基準に適合するレベルを目指して設計しました。
開口部:すべての窓を高性能断熱サッシ+Low-E複層ガラスへ交換
壁・天井・床:断熱材を入れ替え、隙間を徹底的に処理
玄関ドア:断熱ドアに交換し、気密性を大幅に改善
断熱改修は、単に“寒さ対策”ではなく、冷暖房効率の向上=省エネ効果の向上にも直結します。
また、室内の温度差が少なくなることで、ヒートショックのリスク低減や結露防止にもつながります。
設計段階で熱橋(ヒートブリッジ)対策を意識することで、長期的に快適で健康的な住まいへと生まれ変わりました。
建物の性能向上とあわせて、設備機器も最新型へと更新しました。
給湯器は高効率型(エコジョーズ)を採用し、浴室には高断熱浴槽を設置。
水まわりには節湯水栓を使用し、空調は省エネ性能の高いエアコンに入れ替えました。
これらの省エネ設備は、断熱性能と組み合わせて初めて真価を発揮します。
建物の「器(断熱)」と「設備(省エネ機器)」の両輪が揃うことで、快適性を保ちながら光熱費を抑えることができます。
設計段階から「トータルでのエネルギー効率」を意識し、仕様を決定しました。
また、今回の改修工事では、「省エネ部位ラベル」も発行しています。
これにより、改修後の住宅が省エネ基準に準じていることを客観的に証明でき、将来的な資産価値の向上にもつながります。
構造を活かしながら性能を高めるリノベーションは、建て替えに比べてコストを抑えつつ、環境負荷を減らすという大きなメリットがあります。
建物の資源を無駄にせず、「これまでの暮らしを引き継ぎながら、次の世代へつなぐ住まいづくり」。
それが私たち設計者の目指すリノベーションです。
リノベーションは「直す」だけでなく、「住まいの価値を再構築する」工事です。
私たちは、今後もお客様の暮らし方や建物の特性に合わせ、最適な設計提案と確実な施工で、より良い住まいをつくり続けていきます。
長期にわたる工事にご協力いただいたお施主様をはじめ、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
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